極彩


さようなら

はじめまして

こんにちわ

ひさしぶり

私の愛する
可愛い人

僕の愛した
綺麗な人


極彩−night color−


それは異様な姿だった。
赤い死神は鎌を担ぎ、小脇に青銀の天使を抱えて戻って来たのだ。

彼の居候先の主である黒い男は普段は冷静に細められたその目を驚愕に見開いた。

「それは・・・何です?」
「天使だ」
「どうしたんです?」
「落ちていた」
「落ちてた天使を、拾って来たんですか?」
「・・・何か悪いか?」

憮然と答えた青年はここの居候である。
家主に対する態度とは思えないがここにそれを気にする馬鹿はいない。
言うだけ無駄なのは分かりきっている。

「く、くく・・・」

途端、黒い男は肩を震わせて笑い始めた。

「あっははは、はは!戦争に出ないばかりか、天使を拾って来た?傑作じゃないですか!」

何が可笑しいのか。
腹を抱え、目に涙を浮かべるほどに笑う男を見て青年は眉間を寄せた。

「はは、それで?その天使・・・どうするつもりなんです?」

どうする、というのはつまり。
その目は殺すのか?と問うているのだ。

「興味は無い」

天使を、殺すことになど。

それを耳にした男はうっそりと笑った。

「興味が無い、ですか」

その目に浮かぶのは、好奇のような、喜びのような、失望のような、希望のような。

死神の青年がソファに天使を寝かせる。
その背中を作業用の椅子から眺めて、男はまた笑った。

その出逢いを無数の硝子球の瞳が声もなく見つめていた。


END